07. ホントにあったトホホな話ーその2、みんなが可哀相
ある日の事務局会議で、現在のサイトの問題点を幾つか指摘したら、是非それを他の関係者にも聞かせたいので、推進会議の席上で発表して欲しい、と言われた。
「ちょっと刺激が強すぎませんか?」「ありのままを言っちゃっていいんですか?」と懸念しつつも、「いや、たとえ耳の痛い話であっても、全部残らず聞いてもらったほうがいいでしょう…」という担当者の意向もあって、結局発表することになった。
「内容はお任せ」ということだったので、「ま、簡単でいいか」と軽い気持ちで作業に掛かったのだが、問題箇所一箇所につき、画面キャプチュアと簡単なコメントをつけて、1ページにまとめたモノは、あっという間に100ページ近くに膨れ上がった。当日、会議室に集まった30人近い推進会議のメンバーに対して、現サイトの問題点に関するリポートを発表した。予定していていた私の発表の持ち時間は30分だったが、発表が終わった時、既に1時間半が経過していた。
その入魂(?)の発表に対して、反応したのは、わずかに2人。しかも、その2人はもともと「あの人はとても熱心」と言われている数少ないモチベーション高い人達で、他の人たちは、無反応、無関心。何で自分たちが今ここに座ってこんな話聞かされなくちゃいけないのか?といわんばかりの怪訝な表情の人もいれば、「船を漕いでる人」も何人か居た。ま、それはいい。
それは、(私の)発表の内容がどうこうではなく、それ以前に推進委員会のメンバーはこの場所に必ずしも納得してきているわけではない、からだ。そもそも、この委員会の成り立ち、進め方に問題があって、それがちゃんとメンバーに説明されていない、彼等とコンセンサスが取れていないために、会自体が機能していない。明らかにみんな嫌々集まっている。呼ばれたから、仕事だから、仕方なく…。それはよいとして、問題はその後。その次の事務局会議での事。
事務局会議のメンバーというのは、広報、宣伝、デザイン、システムの各セクションの代表によって構成されている。この日の会議は、私の直接の雇い主である、デザインチームのリーダーが不在だった。このとき、私は今後の具体的な展開について発言するため、20ページ程の説明資料を用意していた。で、1ページ目を説明している最中に、(つまり説明を始めてすぐに)事務局長から、
- 「みんなそれなりに一生懸命やっているのに(頑張っているのに)、あんなにボロくそに言われたら可哀想ですよね。やる気無くなっちゃいますよね」
- 「事前の告知無しに(何の前触れも無く)Flash Movieが始まったりするのは良くないって言うけど、そういう表現(方法)があってもいいと思うんですよ」
…等の前回の私の発表に対する批判的な発言があり、それをきっかけに他のメンバーからも、
- 「具体的に該当箇所を示して「ホラ、ここ見てください。ヒドいですよね?」って言われても、何がどうヒドいのか、分からないんですよ。」
- 「デザインの良し悪しとか、センスの良い悪いなんて、誰が何の根拠で決めるんですか?」
といった、ほとんど開き直りというか、イチャもんというか、揚げ足取りというか、逆ギレというか~ともかくそういう発言が集中し、私の発表は中断を余儀なくされた。
挙句、その日の発表資料(Power pointで作成した文字ベースのもの)に対しても、「言葉や文字で言われても分からない。絵や図形で示してくれないと理解できない」などというツッコミが入ったので、このまま話を続けてもダメだと思い、結局それ以上の説明は止めた。
彼等の言ってる言葉の内容やその真意は、ここではあまり関係無い。問題なのは、うち(=デザインチーム)のリーダーが居ない今回に限って急にそんなことを言う(=いつもは言わない)ということだ。他のチームへの、そしてこの事務局メンバーの中で唯一のよそ者(=外部の人間)である私への牽制である。
「オマエの言ってることが必ずしも正しいとは限らんぞ」
「いや、たとえ正しいとしても、オマエの言うなりにはならないぞ」、と言わんばかりの…。
実は、一番最初に、この会社の社内会議に私がいきなり現れた時には、(デザインチームのリーダーが事前に社内的に何の説明もしてくれてなかったこともあって)、かなり警戒されて、露骨に嫌な顔をされた。それから月日が経ち、何回も打ち合わせをして来て、さすがにこの頃はそーいうことは無いと思っていたのだが、…甘かった。
「あんなにボロくそに言われたら可哀想…」というのも、本心かどうかは分からない。何処まで本気で言ってるかも分からない。是非みんなの前で直接言ってくれ!って言うから、発表しただけなのに、それはないじゃん?と思うのだが…。
確かに「忌憚の無い意見を言ってくれ!」と頼んだけど、「あそこまでヒドい事言わなくてもいいじゃないか」ということか?ま、もしかしたら、単純に、ホントにちょっと傷ついたのかもしれない。 でも、それが目的だったんじゃないのか?
ここでは、もう、(私が呼ばれた本来の仕事であるハズの)WEBの知識とかテクニックとか制作のTIPSとか、そんなのはどーでもよくなっている。彼等とどう接していくか?彼等の警戒心を解いて、こちらの主張を理解してもらうには、どうしたらいいか?それこそが問題になっている。どんなにこっちが正論を言っても、彼等が聞く耳を持たなければ、意味が無い。
各メンバーは、一人一人みな熱意を持って取り組んでいるし、個人的に話すと、ちゃんと自分の意見も持っていて、とても素直で知的な、良い人ばかりなのだが、これがひとたび集団という単位になると、おかしくなってしまう。 こうなると、もはや、WEBがどうこうではなく、組織論とか、人材マネージメントの領域だ。
でも、これこそ、クライアントの内側深くに入り込まないと、遭遇し得ない問題である。単なる外注さんとの打ち合わせではこうはならないだろう。 そういう事を乗り越え、彼等に理解してもらうように事を進めて行く…、これこそがホントのコンサルティングではないか。