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12. ホントにあったトホホな話~その4、去勢された人々-1(No Anger)

Part-1. 何故怒らない?

これも、ある大手企業クライアントの話

私は、その頃、その会社の現行のサイトのReviewを行っていたのだが、その最中に、ある大きな(いや、小さいけどかなり重大な)ミスを発見した。サイトのフッタ部分のコピーライト表記(Copyright)に、スペルミス(誤植)があったのだ。本来「All rights reserved.」が正しいハズだが、「All right reserved.」になっていた。(→sが無い)

Reviewには、ある程度の時間をもらって、ドキュメントにまとめた上で、次回のミーティングの時に、発表する予定でいたので、「出来ればこうした方がいい」「こういうのは良くない」というレベルの改善点であれば、その発表の後に修正でも良かったのだが、誤植というのは最も初歩的なミスであって、緊急に修正しなければならない性格のモノだ。このサイトは、ナヴィゲーションを兼ねたヘッダ部分と、フッタ部分は(フレームではないものの)各ページ共通の要素なので、一箇所間違ってるということは、すべてのページで間違っているということになる。(ちなみに、英語のページもあるが、そっちのコピーライト表記のスペルは間違っていなかった。)

 

私は早速、担当者に連絡して、

  • (英語のスペルミスに限らず)誤植はもっとも初歩的なミスであり、誰が見ても分かる分かりやすい間違いなので、かなり目立つし、恥ずかしい
  • それ故に、それを放置しておくことは、会社(企業)としての信用にかかわる問題である(英語の綴りすらちゃんと書けないのか、この会社は?と思われても仕方ない)
  • だから、一刻も早く修正すべきである

と伝えた。

担当者も(当然この時初めて知ったわけだが)「こりゃ、ヤバい」ということで、早速然るべき部署(事務局の責任者)に連絡した。

ま、ここまではいい。

(その後私自身もそのことは忘れていたのだが)それから約一週間後、ミーティングの日。その日はReviewの内容を発表するので、説明用のドキュメントを手元に置いて、もう一度実際のサイトと照らし合わせながら、内容の確認をしていたのだが、フと気が付くと、ナント!例の誤植がまだ直っていない!ミーティングの席でそのことを指摘すると、「現在修正中です」という返事。

ちょっと待て!修正中?あんなのを修正するのは、一瞬で済むハズだ。

上述の通り、フッタ部分は各ページ共通で、しかも画像ファイルの使い廻しなので、画像を一点直せば、自動的に全てが差し替わる。だから、修正作業なんて、具体的には、(PhotoshopやFireworks等の)オリジナルの作業ファイルを開いて、一文字(sの字を)追加して、GIFや然るべきファイル形式で書きだして、それをFTPで上書きすれば終わりだ。5分で終わる。いや、5分がムリでも10分あれば確実に終わる。そんなに簡単な作業なのに、あれから一週間経っているのに、まだ修正中とはこれ如何に?

制作会社は、一体何をやっているのか?クライアントをバカにしているのか?クライアントは、ナメられているのか?

その辺りを、突っ込んで聞いてみると…、

 

まず、すぐに制作会社に話が行ってなかった、すぐに修正を依頼したわけではなかったようだ。具体的には、外部の制作会社を管理している(窓口となっている)システム部門の担当者が、話を留めていたのだ。つまり、制作会社がずっと抱え込んでいたわけではなかった。

クライアントの担当者が制作会社へ修正を伝えずに止めていたという状況の説明図

じゃあ、何故すぐに連絡しなかったのか?

その理由がスゴい。「いやぁ~、○○さん(←制作会社の名前。コラムNo.13で出てくるA社のこと)もいろいろとお忙しそうみたいなので…」

な、なにぃ~??

クライアントが発注先にそんな変な気を遣ってどうする??しかも、それを聞いた他のメンバーの反応が、「ですよねぇ~」だ。誰も怒らない。誰も彼を責めない。で、しばらくしてから連絡したのだが、連絡を受けた制作会社は、「今日はデザイナーが帰っちゃったからムリ」とか「今他の案件が立て込んでるから」とか理由をつけて「(作業に)一両日欲しい」と言ったそうだ。

なぬぅーーーー!?

修正なんて10分だろ?

すぐ直せよ!

連絡受けたのが夕方なら、今晩中(=明日の朝までに)に直すって言えよ!

これを聞いた他のメンバーの反応は「なるほどー」。って、何でそうなるのー??

みんな、おかしいよ。クライアントはもっと怒ってよ!制作会社はもっと恥ずかしいと思わなきゃ!誤植は恥ずかしいよ。間違ったままの状態で一分一秒でも長くネット上に晒されているのは、「会社の恥」だよ。

 

フツーなら、第3者である部外者の私に指摘された事自体も恥ずかしいだろうし、初めて発覚した時点で、「あー、これまでこんなに長い間、間違ったまんまだったのかー!?」と大いに反省するハズなのに、そうはならない。フツーだったら、間違いが発覚した時点で、電話かもしくは呼びつけて猛抗議するでしょ?「今すぐ直せ」だけじゃなくて「今までの事はどうしてくれるんだ?」とか言うでしょ?「金払わんぞ!」位の事、言うでしょ?(実際には払わないかどうかは別にして)

これが、私が以前在籍していたデザインプロダクションであれば、社長(兼アートディレクター)は、ミスが発覚した時点で、制作会社を呼びつけて「出入り禁止じゃー!」と叫び、同時にミスを見逃した自社の社員に対して「お前ら、クビじゃー!」と怒鳴っているハズだ。(ホントに出入り禁止やクビにするかは別にして)

  • 間違いがあった事をすぐに(制作会社に)伝えない
  • 伝えた時点で怒らない
  • 伝えても即刻直そうとしない制作会社(の態度)を怒らない

何で怒らないのか?

それは別に腹が立ってないからだ。怒りを感じないから、別に怒らない。自分の事だと思ってないから、腹が立たない。俺の会社に恥じ掻かせやがって!とは誰も思わない。これがもし担当者本人の個人名が違ってたりしたら、もっと早く対応するかもしれないが、要は所詮他人事(ヒトゴト)なのだ。

(次のページ「Part-2、何故恥ずかしいと思わない?」へ続く→)

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