13. ホントにあったトホホな話~その5、去勢された人々-2(No Pride)
Part-1. Communication Breakdown
これも、ある大手企業の話
ちょっとフツーでは考えられないが、何故かこのクライアントは、その頃、意図的に段階的なリニューアルを行っていて、現行サイトの中に、リニューアルを終えた部分(トップページ、第2階層、第3階層の一部)と、まだリニューアルしていない部分(第3階層以下の部分)が、混在していた。
まだ私が事務局に出入りするようになってすぐのタイミングだったが、早速、「(まだリニューアルしてなかった)会社概要の第3階層以下のデザインのラフがあがってきたので、チェックしてコメントして欲しい」という依頼を担当者から受けた。
その時、既にオリエンも終わって、各社の案も出揃った後の状態だったので、そのタイミングで見てくれ、と言われても、アドヴァイス出来ることなんて知れているのだが、とはいえ、それも仕事なので、
- JPEG(もしくはbmp)の1枚絵しか見ていないので、ナヴィゲーションやページ間移動などの動きについてはコメントできない
- どういうオリエンをしたのか分からないので、出てきた案が何処までオリエン内容に沿ったモノかどうか?の判断は出来ない
- よってこれまでの経緯等は一切考慮せずに、あくまでページレイアウト的な見た目についてのみコメントする
…という条件付きで引き受けた。
で、見てビックリ!(←何か、毎度のことだけど…)
4社から全部で8案(も)提出されている。これからサイトを全面リニューアルするというならともかく、既にメイン部分のリニューアルは終わった後で、たまたままだ終わってなかった1カテゴリーのために4社がプランを出すというのはどういうことだろう?
ちなみに4社のうちの1社、A社は現在のリニューアルサイトの制作を担当している会社で、聞けば誰でも名前を知ってる、チョー大手メジャー会社である。常識的に考えれば、このA社が引き続き他のパートの制作も請け負うことになるのが普通なのだろうが、何故か他に3社もエントリーしている。A社はこれまでの仕事振りに不満を持たれていて、コンペになっちゃったのか?
その数もビックリだが、中身はもっとビックリ。担当者に「どれがいいですか?」と聞かれたが、結論から言うと、全滅!どれもヒドい、のだ。しかも絶望的に…。比較検討以前の問題である。純粋にデザインレベルが低いというのもあるが、その前に、「どうやったらこれが現行サイトの会社概要部分にハマるんだ?」という、何も考えてないとしか思えない案ばかり。
そもそも、今回の部分的リニューアルは、現行サイトのトップページや第2階層のデザインと合っているものでなくてはならない。 当たり前だけど…。
現行サイトの特徴としては、
- 原色やドギツい色は避け、パステル系や淡いトーンの色使いでまとめる。
- 文字はゴシック系
- 商品写真以外は写真を使わず、統一されたイメージのイラストを使う
- 矩形や囲み罫などは角丸などを使い、柔らかい感じにする
…等が挙げられる
最低限、これらの要素とマッチしていなくてはならない。
で、各社の案を見てみると…(各社の案が如何にヒドいかというのを説明するのがここでの主旨ではないので、詳しくは書かないけど、ともかく)どこもヒドい。
大体、どこの会社の案も写真主体のアプローチになっている。この時点で、既に違うでしょ?明らかに(サイトの他のページと比べて)異質でしょ?しかも、トップページ以下イラスト主体のデザインを担当してきたA社までが、それを無視して意味の無い写真を入れた案を出してきている。A社はどうやら前回のリニューアルの時とデザイナーが替わったらしいのだが、それが明らかに分かってしまうぐらい、別物になっている。とても同じ会社の延長線上のプランとは思えないくらい、タッチも違うし、比較すれば今回の方がセンスが悪い。
それに、どの案も(このクライアントのコーポレートカラーである)「緑づくし」(=緑一辺倒の配色)だ。そういう(緑だらけにしてくれという)指示をこちらから出したのか?それとも制作会社側が勝手にやったら、たまたま4社とも似てしまっただけか?
ま、いずれにしても、ヒドい。「こりゃきっと、まともにオリエンしてないな?」「してたとしても、やり方が悪いな」と思い、ミーティングの際に、(会社概要ページを管轄している)広報部の担当者に、「一体どんなオリエンしたんですか?」と聞いてみた。そしたら、「いやぁ~、オリエンって特にしてないんですよぉ~」と来た。なぬぅーーーーーーーーー???
聞けば、
- 特に改めてオリエンの機会は設けていない
- 別件で打ち合わせに来た各社に、バラバラに説明しただけで、後は各社が勝手にPLANを持ってきた。
- バラバラに(個別に)説明しているので、当然、各社へ与えている情報の内容も違っている
- 4社のうち、3社(A社、C社、D社)には個別に話はしたが、B社に至っては、完全な自主プレで、オリエンどころか会って話もしていない。電話でチラっと話しただけ
…というのだ。
なるほど、これじゃぁマトモな案が出てくるワケがない。オリエンのやり方が悪いどころか、オリエンしてないんだから…。
みんなおかしいよ。こんなモノの頼み方してるクライアントも、それに応えて実際にPLANを出してくる制作会社も。制作会社は、こんないい加減なやり方してるクライアントに対して怒れよ!そんなことじゃダメですよ、って言ってやれよ!こうやってやるんですよ、って教えてあげろよ!一緒になってやっててどうすんの?
クライアントも、あんなヒドいラフを堂々と持ってくる恥知らずな制作会社に対して、怒るべきでしょ!デザインレベル以前に、基本的な仕事のやり方、おかしいでしょ?みんな。何でこんな事になっているのか?一体今まではどうしていたのか?
実はこれまでは、デザインの事が分かる人間抜きで、オリエン→プレゼンをしていた。だから、彼等は出てきたラフを見ても別にヒドいとは思わないし(同時に良いとも思わない)、我々が「ホラ、こんなにヒドいでしょ?」と言っても「何処がどうヒドいか分からない」「何でそんなに怒ってるのか分からない」と言うのだ。
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