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18. ディレクターとは?

"Don't forget that I cannot see myself. My role is limited to being the one who looks in the mirror."

(自分には自分が見えないことをお忘れなく。出来るのは、鏡に映った姿を覗き込むことだけ)

 

~Jacques Rigaut(ジャック・リゴー)

前回、ディレクターとは何をする人だろうか?という問いに対して、特にWebディレクターの場合は、私個人としては、「そのプロジェクトを責任もって最後まで導く人」、つまり「プロジェクトリーダー(とほぼ同義)である」と認識している、と書いた。

(→コラム01. Webプロデューサとは? Webディレクターとは?参照)

 

責任もって最後まで導く人、言い換えれば、「プロジェクトをかんりする人」とも言える。ここで「かんり」と平仮名で書いたのには意味がある。

ところで、「かんり」ということばには「管理」と「監理」の2種類があるのをご存知だろうか?また、知っていたとして、普段その違いを意識しているだろうか?使い分けしているだろうか?結論から言うと、辞書を引いても(調べ方が悪いのかもしれないが…)明確な違いは書かれていないので、以下はあくまで私流の解釈だ。

私が新卒で最初の会社に入って間もない頃、イベントの見積を作っていて、先輩に「『現場管理費』じゃなくて、『現場監理費』だぞ!」と注意された。

「現場監理費」の場合は、「監理」で、「制作進行管理費及び営業経費」の場合は、「管理」である、と。

つまり、実際に現場に出向いて、自分の目でちゃんと見ます、監視します、という場合は「監理」。物理的にその場所に居る、具体的に現場を見ている、ということがポイントである。イベントの準備期間や開催中ずっと現場に体を拘束される場合には、この現場監理費が発生する。

それに対して、普段現場には行かないけど、何かあったら出て行きますよ。その前に何か無いように気を配りますよ。という場合が管理。抽象的な意味でプロジェクトの進行状況全体を見ている、ということで、物理的にその場所に居る、とは限らない。むしろ、居ない事の方が多いかもしれない。

「せいさく」という言葉にも「制作」と「製作」があり、我々は普段から何となく、ソフト絡みは「制作」、ハード絡みは「製作」と使い分けている様に、それ以来、同じ「かんり」でも、「概念としての『管理』」と「行動としての『監理』」で使い分けるようにしている。

ディレクターという言葉は、いわゆるカタカナ英語だが、英語のDirectorは、よく「監督」と訳される。映画監督などが良い例だ。ここにも「監」という字が含まれる。となると、ディレクター(監督)は「プロジェクトをかんりする人」である、とした場合の「かんり」は、当然「監理」の字が適当なはずである。

 

さて、この「監」という字だが、漢和辞典などで調べてみると、

もともとは、「人が身体を屈めて、水鏡を見ている」という意味らしい。鏡を見る→鑑みる(かんがみる)の原字でもあり、転じて「上から見る、見張る」という意味に用いられる。現在では、専らこの、(他者を)「見張る」意味で使われることが多いような気がするが、同時に、自分を見る、手本や戒めとする、という意味もある。

ディレクションというと、何となく「人をある方向に導く」というような「他人(ヒト)に働きかける行為」のイメージがあるが、語源からすると、「(他人ではなく)自分を見つめる行為」である、とも言えるようだ。

だからこそ、誰がやっても同じようにはならないのだろう。我々の仕事は、デザイナーやイラストレーターのように、目に見える分かりやすい作品や実績という形では表には出てこないが、確かにそこにはその人の個性や「らしさ」が出てくるのだから…。