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freeform design

ホントの理由は何処にある?

"The causes of events are ever more interesting than the events themselves."

(事故の原因は、事故そのものよりも興味深い)

 

~Marcus Tullius Cicero(マルクス・トゥッリウス・キケロ)

(前のページ「Webサイトの各構成要素の問題点」の続き→)

さて、それではサイトがうまく行かない理由は何処にあるのでしょう?何が問題なのでしょう?

結論から言うと、(2)のクライアントの社内のワークフローに問題があります。おいおい、プロのくせに、「悪いのはクライアントだ」と言うのか?それが仕事のはずなのに「うまく行かないのを客の所為にするのか?」と言われそうですが、「そう」なのです。

実際にはそんなことは有り得ないと思いますが、仮に制作会社側に一切問題が無かったとしたら、つまり(4)(5)(6)(7)に問題が無く、完璧だったとしたら、うまく行くでしょうか?完璧なパートナーを得ることが出来れば、クライアントは自社のサイトを満足の行くものに作り変えることが出来るでしょうか?理屈から言えば出来るハズです。でも、実際には必ずしもそうは行かない。

それは何故か?

(2)に問題があるから、です。

 

先ほどの図でも分かるよう、(2)とはクライアントの社内のワークフローです。制作会社と共に行う(7)とは違います。プロジェクトがスタートして(7)が発生した後も、(2)は依然として残ります。プロジェクト開始前も、開始後も存在するもので、2つの同心円がくっついても、くっつかなっくても、それに関係なくいつもそこに在るのです。

制作会社側は、(7)については自分たちが主導権を取り、正しい方向に導くこともできますが、(2)に関しては、そうもいきません。(4)(5)(6)が問題の場合は、発注先を替えれば済む話ですが、(2)はそれでも変わりません(=変えることができません)

つまり、クライアントにとっては、どんなに素晴らしい制作会社と組んでも、自社内に(2)の問題があれば、うまく行かないのです。制作会社にとっては、どんなに完璧な仕事をしたつもりでも、クライアントの社内に(2)の問題があれば、うまく行かないのです。

このごく当たり前な、でも非常に重要な事実は、実際のところ、あまり指摘されていません。その理由の1つは、クライアントが自分自身では気付かない、外から見えにくい(制作会社も気付きにくい)、比較的後になってから、プロジェクトが始まってから、じゃないと見つからない…といった元々目立たちにくい、見つかりにくい要素であること。そして、もう1つは、たとえ見つかっても指摘されにくい、修正しにくい事情があったからです。

それは何か?

基本的に、クライアントは自分たちが悪いなどとは思っていないし、認めたくない。悪いのは、(問題があるのは)それは制作会社の側だと思っている。制作会社側は、やはり自分たちが悪いとは思っていないし、認めたくない。

さらに、制作会社は「基本的にクライアントは悪くない」という前提に立っているので、クライアントの内部の問題は見えないし、見ようともしない。たとえ、見えたとしても、必ずしもそれを指摘して正そうとはしない。制作会社側がクライアントを切り捨てると言うことは、滅多にないから、結局、クライアントが制作会社を替えることになります。たとえ、問題がクライアント側にあっても、です。

つまり、従来、当たり前だと思われていた、クライアントが代理店や制作会社に発注して、Webサイトを構築するというスタイル、それ自体が持つ、構造的欠陥なのです。制作ベースの(制作を念頭においた)プロジェクトにおいては、純粋な制作プロセス以外の問題点は克服できないのです。

これは、最近流行の、クライアントが直接派遣のWebデザイナーを雇ったりする場合でも同じです。派遣スタッフが与えられた職務(彼のパート)を忠実にこなしたとしても、問題が別のところにあれば、プロジェクト全体の成功はないでしょう。制作プロセス以外の問題点を解決するためには、制作という枠に囚われないモノの見方、考え方が必要になります。

社内深くに入り込むことで見えてきた事

さて、私は、幾つかの会社で、Webコンサルティングに関する顧問契約をし、立場的には外部の人間でありながらも、社員と同じように、社内会議に参加し、事務局会議にも参加し、制作会社との打ち合わせにも同席しました。それを通して数々の、(2)=クライアントの社内のワークフロー問題に直面しました。

たとえば、

社内での

  • 組織編成がおかしい
  • 事務局メンバーの選出の仕方がおかしい
  • 会議の進め方がおかしい
  • 議事録の書き方がおかしい
  • スタッフ間の信頼感の欠如
  • 無責任
  • 事無かれ主義

社外との

  • オリエンがおかしい
  • 打ち合わせがおかしい

…などなど、おかしいところだらけ。冗談みたいですが、ホントです。

 

つまり(2)の問題とは、Web制作のプロセスを通じて明らかになる「本質的な組織の問題」で、事はWebに留まりません。

問題の根っこは、もっと別の深い、ふか~い処にあるので、事態は深刻です。

(これらの事実は、従来通りの一制作会社、一外注さんとして接していたら、まったく分からなかったでしょう。)

社内のワークフローと言っても、彼等の仕事のやり方全てを否定しているわけではありません。彼等は本業ではバリバリやってますし、優秀な社員に違いないのですが、取り扱うテーマ・内容が、ことインターネットやWebサイト、イントラネットやその他IT関連も含めた広い意味での「情報デザイン」の分野になると、特有の問題が出てきてしまうのです。そこでは、彼等当事者の抱える大きな誤解や偏見、勘違い、苦手意識に加えて、会社という組織構造自体が、マイナス要素として働いていることは否めません。

(次のページ「大きな組織特有の問題」へ続く→)

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