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freeform design

何故誰も指摘しない?

 

(前のページ「大きな組織特有の問題」の続き→)

冒頭でも書いたように、Webサイトの作り方、デザイン、プログラム、等については、既に語り尽くされています。この世界はもの凄いスピードで動いているので、常に新しいことを勉強して覚えなくちゃいけない。書店に行けば、最新技術やWebサイト制作について書かれた書籍、アプリケーションに関する解説本がたくさんあります。(ホントに、こんなに出して売れるのか?っていう位出てますね?)

最近は、そういう純粋な技術やテクニック的な内容ではなく、サイト構築の為のノウハウやワークフローについて解説する本も多く出版されています。中身はどれも似ているし、書いてある内容は全くもってごもっともです。

似ていること自体は決して悪いことではありません。それは語る人が違っても「言うべきことはひとつ」「やることは決まっている、誰が考えても同じ」ということを意味するからです。どの本にも全く違う内容が書かれていたら、それはそれで各本毎の差別化はできるかもしれませんが、「どれがホントだ?」「どれを参考にしたらいいんだ?」と読む方は困ってしまいます。

 

だから、似てるのは別にいいんですが、これらはほとんど全て、クライアントが、「これこれの予算で/いつまでに/こういう内容のサイトを作りますよ」もしくは「リニューアルしますよ」というのが決まった後のフローについて書かれています。プロジェクト開始後のフロー、つまり、(7)=共同ワークフローについての解説です。モノによっては、(5)=制作会社の社内のワークフローも含まれているかもしれません。

何で(7)=共同ワークフローについてばかり語られるのか?何で誰も(社内のワークフローの問題については)指摘しないのか?1つには、先程の「目立ちにくい」という性格に拠る部分もあると思われますが、もう1つには、ある「単純な誤解」があると思われます。プロジェクトが始まって、2社が共同で仕事を進めるようになると、ワークフローというのがすべて共通になるかのように思われるかもしれませんが、これが大きな誤解なのです。

プロジェクト開始後の誤解されている図
図9

図9は、卵を2つ使った目玉焼きの様にも、中国の京劇の猿のお面の様にも、双眼鏡の様にも見えますが、これはプロジェクト開始後、2社のワークフローがひとつになった、溶け合った状態です。プロジェクト開始後のワークフローがこうなる、という前提に立てば、そういう本ばっかり書かれるはずです。

でも実際は違います。プロジェクトが始まっても、各社の社内のワークフローというのは依然として残るのです。(図8)プロジェクト開始以降は、(理屈としては)ワークフローが3つになるのです

プロジェクト開始後の心技体の断面図
図8

ここでは説明上こう言ってますが、まぁ、そんなに明確に分けれるものでもないし、もしかしたら全部一緒なのかもしれないし、実際はやってる本人(当事者たち)にはそんな区別の意識は無いでしょう。いずれにしても、制作会社が自分たちでコントロールしていると思っていたワークフローというのは、実は、(5)と(7)で、(2)は含まれていない。(2)に潜む問題は、人知れず、淡々と進行していきます。

プロジェクト開始後の構成要素の断面図
図7

そういう理由からか、ホントに為になるかどうかは別にして、(1)については、IT導入に関する心構え的な話が書かれたビジネス書が沢山あるし、(6)については、月刊誌やムック本などが、常に最新テクニックを教えてくれる。(4)(5)(7)には、ワークフロー解説本がある…、でも、(2)=クライアントの社内のワークフロー(とその問題)について言及されているものは、ほとんどありません。少なくとも私は今までのところ、2~3冊しか見たことがありません。ここでもやはりクライアントの社内のワークフローの問題は、注目されていないというか、テーマとしてまともに取り上げられていません。

(次のページ「おわりに」へ続く→)

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