Webコンサルタントとして必要な条件とは?
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ここまでは、たとえ話でしたが、では具体的に、Webコンサルタントとして必要な条件は何でしょうか?
まず前提として、中立の立場に立っていることが重要です。
「クライアントでも制作会社でもない」「発注側でも受注側でもない」となると、コンサルティング専門会社か、特定の組織に属していない個人(フリーランス)か、もしくは限りなく個人に近いスタンスを取れる小規模な集団のコンサルタントとなります。

そして、この人は、クライアントの社内の問題を発見、把握、指摘、追求、改善する為に、
- クライアントの内部深くに入り込める
- Webやデジタルデザイン以外のスキル(コミュニケーション能力)にも長けている
- 制作から切り離されている
という条件をクリアしている必要があります。
まず1つ目に、クライアントの内部深くに入り込まなくてはならない、つまりただの外注さんじゃダメです。発注側と受注側の定期的な制作会議じゃダメなのです。社内会議に社員と同じように参加しなくちゃいけないのです。だから、派遣スタッフや制作会社は遠すぎる。でも、近すぎてもダメ。身内になっちゃダメ。正社員や契約社員とか出向まで行っちゃうと近すぎる…この、間合い(=人間同士の距離感)が非常に大事です。
特集1に続いての「武道繋がり」として、ここでは、剣道を例に取りましょう。
剣道において、「間合い」とは非常に重要な考え方です。(剣道に限らず他の武道全般についても同じだと思いますが…)

相手との距離が遠すぎても、技が繰り出せない。相手との距離が近すぎると、斬られてしまう…。遠からず近からず、の微妙な距離です。一般的に、中断で構えた時に、剣先と中結いの間で竹刀が交わる位が、「適切な間合い」と言われています(多分…、違ったらごめんなさい)。「間合い」という言葉には、正しくは、単に物理的な距離ではなく、精神的な意味での距離も含めたもっと深い意味があるハズですが、ここは剣道についての解説をする場ではないので、詳しい説明は省きます。相手との絶妙な距離感という意味では、「間合い」の考え方に似ていると思います。
(ま、剣道の場合は勝負で、Webサイトの場合は共同作業なので、同列に語るのはちとムリがありますが…)
2つ目に、Webやデジタルデザイン以外のスキルがないといけない、つまりただのWebディレクターやWebプロデューサじゃダメです。時には、部長や課長、場合によっては社長や幹部などのキーマンにプレゼンしたり、説教したり(?)しなくてはなりません。クライアントに向かって、「あなた達の会議の仕方がなってない」「議事進行がおかしい」「打ち合わせの仕方が間違っている」「真面目にやれ!」…などと言う(=憎まれ口を叩く)のは、とても大変(?)なことです。ここでは、業界の最新知識より、話術と説得力と度胸が必要になります。
ホントの事を言えば言うほど、最初は嫌われます。疎まれることもあります。でも、それでも事実を、都合の悪いことを言い続けなくてはなりません。その為に呼ばれているハズです。いい人になるのは簡単です。都合の悪いこと言わなければいいのですから。それで、クライアント(の担当者達)と、表向きは良好な関係は築けるかもしれません。でも、それはあくまで表向き、見た目だけ。
3つ目に、制作から切り離されていなければならない、つまり制作会社のコンサルタント及び制作会社から給料貰っている人(制作会社から依頼されている外部やフリーのコンサルタント)はダメです。
制作会社に属するWebコンサルタントが「使えない」とか「能力が無い」という意味ではありません。置かれている立場から言って、「中立に立つのは難しいでしょう」という意味です。


制作会社のコンサルティングは、制作物(制作する、制作を伴う)という前提に立ってしか、話が出来ません。(図6)
制作という前提を、土台だとすれば、その台の上でしか話が出来ないのです。(図7)
※ちなみに、ヒヨコみたいに見えるのは、人間(のつもり)です…。

話を分かりやすくするために、この土台をビルの屋上にたとえましょう。(図8)
オフィスを持たないフリーとオフィスや自社ビルを持つ会社との対比からも建物にたとえるのがいいかもしれません。制作会社は、クライアントに有無を言わせずこのビル(自社ビル)に登ってもらう必要があります。そしてどう頑張っても、このビルの屋上という範囲でしか身動きが取れないのです。自社で制作を請け負うという前提がある限り、このビルから降りて何処か他の場所に行くことは出来ないのです。
(こう見てみると、良いことは1つもないようですが、ビルの屋上で話をした方が良いことが1つだけあります。 それは「地上より眺めが良い」という事。でも、それだけです。)


フリーのWebコンサルタントは、地に足が着いているので、何処でも好きなところに行けます。(図9)
移動手段も、徒歩でも、自転車でも、タクシーでも、地下鉄でも何でも選べます。(図10)


ビルに登るにしても、どのビルに登るか(=何処にお願いするか)、選ぶことが出来ます。(図11)
もちろんビルに登らない(制作をしない)、という選択肢もあります。
制作会社は、「このビル(うちのビル)に登ってください」としか言い様がありません。(図12)
クライアントに、ビルの選択の余地は無いのです。たとえば、エレヴェータやエスカレータが壊れていたら、階段で歩いてでも、そのビルに登ってもらわなくてはなりません。
つまり、制作を前提としたコンサルティングには限界があるのです。
制作会社のスタンス
何で制作会社は制作を前提にしてしか話が出来ないか?それは制作会社の成り立ち上、仕方ありません。制作会社は、制作(及び製作)をして利益をあげる、のです。(当たり前ですが…)
元制作会社の営業として言わせて頂くと、基本的に、代理店や制作会社は、自社の商品やサービスを提供することで(買ってもらうことで)利益を得ます。だから、自社製品の購入が前提とした提案を出します。会社の利益を考えれば、より多く、使って(買って)もらった方がいいに決まっているので、余計な(=必ずしも必要でない)オプションも併せて、薦めます。ノルマがあれば、当然でしょう。その反対に、「余分なものはなるべく排除しましょう」「余分な機能やコンテンツは極力排除しましょう」という「逆の提案」をするのは、かなり勇気がいることです。自分の会社の利益をあげようとするマジメな人間は、普通こんなことしないでしょう。
だから当然、制作会社の行うWebコンサルティング、制作会社所属のコンサルタント(が行うWebコンサルティングに)は、制作が伴います。最終的に作ってナンボ、成果物を納品していくら、であり、どういうモノを作るか?というその過程が(彼等の言う)コンサルティングであると考えれば、基本的には作らない方向には行きませんし、予算を出来る限り抑える方向へ努力することも無いでしょう。(←だって、売上減るから。)
それに対して、制作を伴わないコンサルティングオンリーのスタンスでは、利害関係に振り回されずに、 「これは、制作会社のスキルの問題ですね。あそこ(あの会社)はダメですね、替えましょう」(←制作会社へのダメ出し) 「いや、これは御社の問題です。発注先を替えても何も変わりませんよ」(←クライアントへのダメ出し) という判断(=何が問題なのか見極める事)が出来ます。
(制作会社自体を否定しているわけではありません。あくまで、制作会社の提供するコンサルティングの話であって、制作会社の在り方や、提供する制作物の話ではないので、念のため…。)
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